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2007年7月27日の記事。

誘引されてアーデンの森へ

投稿日:

070726お気に召すまま

 近ごろ、ボケが始まっている。季節的なもので、夏の暑さが去るとともに収まるものであればありがたい。
 直近のボケは、同じ演出家による同じ演目を、過去に観ていることを忘れてもう一度観に行ったことだ。幕が開き、二頭の馬(の役の人間たち)が出てきたところで、似た場面を見たことがあるなと感じ、登場人物の台詞を聞いているうちに、その感触はみるみる確信に変わっていった。蜷川幸雄演出、『お気に召すまま』。三年前の夏、さいたま芸術劇場で観ている。今回は、シアターコクーンにて。原作もかつて読んでいるし、シェイクスピアの喜劇といってもいろいろあるので、記憶がブレンドされてまだら模様になってしまっていたらしい。アーデンの森の不思議な魔力なのかもしれない。追放者の自由と恋の予感とに満ちたあの森はじつに楽しく、何度でもふらふらと呼び込まれてしまうようだ。
 ヒロインのロザリンド。この男装の若い女性を男性俳優が演ずるというねじれ具合がおもしろい。男性のふりをしながら女性らしい素性をちらちら覗かせてしまう役柄を、成宮寛貴が魅力的に演じていた。森の首領(前公爵)役の吉田鋼太郎も、懐深い人柄を滲み出す好演。
 この芝居の中で、アホウという台詞が何度出てきたかは数えきれない。阿呆(道化)的役どころの人物が、少なく見ても三人ほど出てくる気前のよさ。典型的な道化役はまだら模様の服を着るものだが、観客席にはまだらボケの男が、少なく見ても一人。アーデンの森の妖しい魔力で、またしばらく僕のボケは続いていくのかもしれない。




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