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2007年10月17日の記事

誠実かつ清純な

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071017オセロー

 脳味噌が黒い雨雲になったかのように重苦しい。さいたま芸術劇場からの帰り道、電車に乗ってからもずっとこの感じが続いた。『オセロー』を観て、ずっしりと気の滅入る、やりきれない感慨を心に詰め込まれて持ち帰ってしまった。
 筋や人物関係を書き出そうとしてみたが、暗鬱なキーワードばかりが並ぶことになり、気が塞いできたので取りやめた。
 なぜオセローは、一番に信ずべき、誠実かつ清純な新妻デズデモーナを信じることができず、冷酷無比な策謀家イアゴーを信じてしまうのか。わけてもオセローとデズデモーナのあいだのディスコミュニケーション、意思疎通の断絶が痛々しく、二人のあいだを隔てている壁は何か……と思いは巡っていく。人種の違いが周囲からの孤立を生み、愛されることへの自信をオセローに持たせずにいるのか。しかし、人種の問題のみに集約されるものでもないだろう。最終場面のカタルシスのあとにも混沌と渦を巻いて残った重だるい感銘が、終幕から数時間を経てなお続いている。
 シェイクスピア原作、蜷川幸雄演出。出演は、オセロー役・吉田鋼太郎、デズデモーナ役・蒼井優、イアゴー役・高橋洋、ほか。
 (記事のタイトル、迷ったものの、とりあえず文中から一番きれいな言葉を抜き出しておくことに……。)




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