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2008年4月18日の記事。

わたし、晩年なの?

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 芸術家を被写体にしたドキュメンタリー映画『≒草間彌生 わたし大好き』を観た。
 飾り気のない映画のつくりで、「素材」のよさが際立っていた。土のついた取れたてのニンジンを丸かじりしてみたら甘かった、といった感触。おどろおどろしくもある外見とは裏腹に、淡々として、かわいらしく、気配りのある彼女の人となりがにじみ出ていて好ましかった。
 インタビュアーでもある松本貴子監督の問いかけがどこか素人くさく、ときに不用意で、それがかえってくつろいだ雰囲気やユーモラスな味わいを醸し出していた。「晩年にすごい作品が描けたなと思いますか」(引用は記憶頼りで若干不正確)と尋ねたときには、「晩年」ってそりゃ失礼だろう! と思いつつ観ていたら、「わたし、晩年なの?」と草間が不思議そうに訊き返し、「そうね、あと五年くらいしたら晩年ね」と穏やかに自答していた。
 草間は絵を描き、えがき出された世界をまえに「すてき……」とつぶやく。映画のタイトルにもなっている「わたし大好き」ぶりを彼女は常に隠そうとしないのだが、どこか自己を愛することがそのまま世界を愛することに通じているような風通しのよさがある。彼女の絵には無数の水玉や目玉が描かれ、絵の世界を見る者をじっと見つめ返してくる。
 渋谷のライズXにて。




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