切実な幻想
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さいたま芸術劇場にて、『エレンディラ』観劇。
因習につながれ、祖母の監督のもと、娼婦の生活を強いられるエレンディラ。彼女と出会い、恋に落ちるウリセス。彼は祖母を害してエレンディラを解き放とうとするが……。現実と幻想が継ぎ目なく混交した世界、幻想的な現実世界が続いていくが、最後、何が現実で何が幻想であったのかが明らかにされて以降の展開は圧巻。ウリセスの存在自体がエレンディラの描き出した幻想であり、彼女が愛に渇え、自由を望んだがゆえに形象化された者であった……と、僕は受け取った。生きがたきを生き延びるために幻想を産み出す者の切実な欲求が、そして彼女の置かれてきた苛烈な現実が、ウリセスの存在から逆照射されるように伝わってきて心打たれた。
祖母役・瑳川哲朗の図太い存在感、ウリセス役・中川晃教の清澄な声、エレンディラ役・美波の毅然とした少女ぶりに惹かれた。
ガルシア=マルケス原作、坂手洋二脚本、蜷川幸雄演出。