「大観音の傾き」河北新報で連載開始
『河北新報』4月7日朝刊に、連載小説「大観音の傾き」第1回《傾いているのか、いないのか》が載りました。
冒頭を引用にてご紹介します。
東北の大きな街の丘のうえに、白くて異様に巨大なものがそびえ立っている。全身純白の大観音だ。そのすぐ近くまで、ついに修司はやってきた。
真正面に立って視線をゆっくり傾けてゆくと、ほとんど真上を見るくらいに至ったところで、ようやく巨像の顔に行き着いた。思わず、ため息が漏れる。こんなに近づいても、顔まではまだ遠い。ふっくらとしてつややかな頬の白さに、呆然と目を向けていた。
丘に立つ大観音は、ずっと離れたところからでもよく見えた。修司もこの街で暮らしはじめて以来、ときおり視界に姿を認めてきた。あるときは駅前の三十階を超すビルの展望台から、またあるときは古城の跡の青葉が茂る山のうえから、遠くを眺めていた折のことだ。ニュータウンの街並みと山林の入り交じる景色に少しも溶け込むことなく、真っ白に屹立した存在が、違和感とともに目に飛び込んできたものだった。
仙台に実在する高さ百メートルの大観音をモチーフとした小説です。毎週日曜、読書面(「東北の文芸」面)での連載となります。
樋口佳絵さんご担当の挿絵にも、ぜひご注目いただけたらと思っています。
下記のオンライン版でも、無料の会員登録で全文が読めます。
〈大観音の傾き(1)〉傾いているのか、いないのか 山野辺太郎(河北新報オンライン)
今後、第2回以降も下記のバックナンバー一覧から読めます。
【ニュース】大観音の傾き(河北新報オンライン)