『ハテラス船長の航海と冒険』(ジュール・ヴェルヌ著、荒原邦博訳、インスクリプト刊)の書評を寄稿しました。題名は「未知へと向かう旅の航跡」。
『図書新聞』(2021年10月23日付、3516号)に掲載。10月16日(土)発売です。
一部を引用にてご紹介します。
書き出しからして、さりげなくも不穏さが漂っている。
「明日の干潮時、二本マストの小帆船フォワード号は、K・Z船長、リチャード・シャンドン副船長の下、ニュー・プリンス・ドックから行き先不明のまま出港の予定」
これは新聞に出た告知文だという。行き先不明のまま、とはどういうことか。K・Z船長とイニシャルになっているけれど、題名のとおり「ハテラス船長」ならば、Hではないのか。K・Z船長は手紙で指令を送ってくるだけで、姿を見せることがない。行き先も不明なら、主人公の存在すらも不明なまま、船はリヴァプールの港から出帆する。旅というのが未知のものへのあこがれ、好奇心、探究心に突き動かされて始まるものであるならば、この航海は大きな未知をはらんだ究極の旅といってもいいだろう。
(中略)
ふだんの暮らしのなかで、旅に出たいと思っても、なかなか準備が整わず、あるいは状況がそれを許さず、狭い生活圏から足を踏み出せない日々が続くこともある。けれど、この本をひらけば旅は始まる。ジュール・ヴェルヌは、大胆さと粘り強さを併せ持った言葉の冒険家にほかならない。その航跡を追って船を出せば、心躍る旅の時間が流れはじめる。
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書評で取り上げた『ハテラス船長の航海と冒険』の詳細は、出版社のサイトにて。
『図書新聞』のサイト
http://www.toshoshimbun.com/books_newspaper/
『図書新聞』(10月23日付、3516号)電子版
https://www.shimbun-online.com/product/toshoshimbunbookreview0211016.html
『ハテラス船長の航海と冒険』出版社のサイト
https://inscript.co.jp/b1/978-4-900997-80-6