短歌にまつわるエッセイを寄稿しました
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短歌誌『メルクマール・メルルマーク』にエッセイを寄稿しました。
雨月茄子春さんの個人発行の雑誌です。
エッセイの題名は「すみれを摘みに」。冒頭を引用にてご紹介します。
すみれを摘みに春の野原に出かけたことがある。
山道をしばらく歩いてゆくと、視界がひらけた。草の緑に、青紫の可憐な花。あたり一面、すみれが咲いていた。すみれのあいだを揺らぎながら飛ぶ白い羽、あちらには黒い羽、向こうにはだいだい色の羽、さまざまな色の蝶たちの姿が目に留まる。自分には羽がない。すみれをそっと踏んで歩いた。すみれ、すみれ、と心のうちで唱えてみる。須美礼、と文字を思い浮かべる。目に映る無数の小さなすみれたち。花に表情はあるのだろうか。微笑んでいるようにも感じられる。人の世に生きる憂さを忘れて、心が解きほぐされてゆく。何も知らぬ赤ん坊に還ってゆくようだった。
2022年5月29日(日)開催の第三十四回文学フリマ東京にて頒布されます(越冬隊ブース・タ-10)。
第三十四回文学フリマ東京
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短歌誌「メルクマール・メルルマーク」(うげつなすはるのお店)