自我&身体の拡張と消滅
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『東京新聞/中日新聞』8月5日付朝刊読書面に、『こんとんの居場所』の書評が掲載されました。評者は豊崎由美さんです。見出しは「自我&身体の拡張と消滅」。
一部を引用にてご紹介します。
穴を掘って日本とブラジルを直線で結ぶまでを描いた『いつか深い穴に落ちるまで』。二〇一八年、そんなトンデモ奇想小説で作家デビューしたのが山野辺太郎だ。
最新作品集『こんとんの居場所』の表題作もかなりユニークな小説といっていい。(中略)二人がそこで何を体験するかは読んでのお楽しみだけれど、読めばわかるのは、これが自我&身体の拡張と他者との同化についての物語だということだ。
一方、自我&身体の消滅と他者との同化について描かれているのが、併録の「白い霧」。(中略)
「こんとん」とは何なのか。作中で〈生命の進化の極限状態〉と示される「蒸発」のメカニズムはどうなっているのか。作者は科学的見解を一切示さず、力技でこの二つの不可思議な物語を立ち上げている。でもハードSFじゃないのだから、それでいい。重要なのは一見バカバカしい物語の底の底に横たわっている自我や生命という命題に向ける哲学的な問いだ。笑いながら考えさせられる。山野辺太郎は本当に不思議な小説家だ。
下記サイトで全文が公開されています。
〈書評〉『こんとんの居場所』山野辺太郎 著(東京新聞)