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『東京新聞』に掌編小説「割れた粘土板」掲載

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 『東京新聞』の「月刊掌編小説」コーナーに小説が載りました。
 題は「割れた粘土板」、約3000字の作品です。挿絵は小河奈緒子さん。
 『東京新聞』4/24夕刊(地域により4/25朝刊)に掲載。『中日新聞』4/25夕刊にも載りました。
 冒頭を引用にてご紹介します。

 わたしじゃない。
 それが、頭をよぎった言葉だった。父の書斎に忍び込み、本棚に立てかけてあった銀色のタブレット端末を手に取って、ひっくり返して画面をこちらに向けた。
 細かにひび割れた少女の顔。光沢を帯びた黒い画面に映り込んでいるのは、自身の鏡像に違いなかった。割れていたのだ。わたしは割ってない。
 電源ボタンを押すと画面が明るくなって、ひび割れた少女の顔は消えた。どうしよう。ひび割れたゴールデンレトリバーがひび割れた子猫たちにじゃれつかれている動画なんて見たくなかった。画面の右上のほうと左下のほうから真ん中に向けて、二つのクモの巣のようにひびが広がっている。
 ふたたび電源ボタンを押して画面を消すと、クモの巣に引っかかった少女が現れる。わたしだ。悔しいけれど、どうしようもない。もとのところにタブレットをそっと立てかけた。

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