角砂糖を借りに
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池袋のシネマ・ロサにて、『借りぐらしのアリエッティ』(米林宏昌監督)を観た。
宮崎駿監督でないジブリ作品には、重厚な大作というより、小粒ながらきらりと光る佳品という印象のものがままある気がするけれども、本作でもそうした感じを受けた。
角砂糖一個を「借り」に小人たちが人間の家に乗り込んでいく、というのがちょっとした冒険になっているという趣向が楽しい。主人公である少女アリエッティが病弱で聡明そうな少年ショウ(翔)に寄せる恋心の切なさも鮮明に胸に伝わってきた。映像は素朴でローテク感の漂うものであり、バッタの躍動感などもよくて、心なごませるものがあった。
人間にとって自然と調和しながら慎ましく生きていくことが大事だけれどもそれが難しくなっているのではないか。そんなテーマが作品の基底にあるように感じられた。
赤いクリップで髪を結わえ、待針を剣代わりにスカートに差して毅然とした少女の勇姿もよく、髪をほどいてくつろいだときの少女の姿とのギャップもまたよく、同族の野蛮そうでぶっきらぼうな少年スピラーと少女との新たな関係の萌芽を感じさせるエンディングを観て、すがすがしく映画館をあとにした。