12月24日ごろ、角川文庫より『いつか深い穴に落ちるまで』が発売となります。
デビュー作が文庫になりました。初めての文庫です。
村田沙耶香さん、ラランド・ニシダさんに帯の言葉を寄せていただきました。
この小説は、突拍子もないのに生真面目で、奇妙なのに誠実で、愛おしいけれど残酷な、私にとって忘れ難い物語でした。
——村田沙耶香氏
作り込まれたリアリティーと荒唐無稽なファンタジーの狭間を行き来する異空間的小説。
——ニシダ氏(ラランド)
巻末の解説は、豊﨑由美さんがご執筆くださいました。タイトルは「想像力のブレーキペダルを踏まない男」です。
装丁は、『大観音の傾き』と同じく、鈴木成一さんです。深い穴の向こうに光が見える表紙カバーとなっています。
裏表紙には、次のような紹介文が載っています。
だって、近道じゃありませんか。戦後まもない日本で、ブラジルまで直通の穴を掘る前代未聞の新事業が発案された。極秘事業の「広報係」となった鈴木一夫は、計画の前史を調べ、現在まで続く工事の進捗を記録していく。地球の裏の広報係との交流や、事業存続の危機を経て、ついに「穴」が開通したとの報告を受けるが……。奇想天外な発想力で多くの本読みたちを唸らせた、唯一無二のサラリーマン小説。第55回文藝賞受賞作。
初出は『文藝』2018年冬号。河出書房新社から単行本が出たのは、2018年11月のことでした。文庫化に際して、加筆修正をしています。
文庫の記号は、角川文庫[や 75-1]です。よろしくお願いします。
出版社の『いつか深い穴に落ちるまで』紹介ページ(KADOKAWA)
『いつか深い穴に落ちるまで』を書店サイトで探す
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『いつか深い穴に落ちるまで』関連記事一覧
河北新報の連載小説「大観音の傾き」が中央公論新社より単行本化されたのを記念して、トークイベントが開催されます。
ゲスト:樋口佳絵さん(画家、連載の挿画担当)
司会:土方正志さん(荒蝦夷、連載の編集担当)
主催:河北新報社、中央公論新社 共催:荒蝦夷
定員:100人(入場無料)、要申し込み
オンライン視聴も可能 ※【追記2】参照
大観音の傾きをめぐるあれこれを、樋口佳絵さん、土方正志さんとともに語ります。
当日は書籍の販売や、サイン会もあります。新刊『大観音の傾き』、既刊『孤島の飛来人』(中央公論新社)に加え、デビュー作の文庫化『いつか深い穴に落ちるまで』(角川文庫)の先行販売も。
会場では、新聞連載時の樋口佳絵さんの挿画が絵巻風に展示されます。こちらもぜひお楽しみに!
お申し込みはこちらから(荒蝦夷)
『河北新報』12月3日付朝刊に、イベントの告知記事が載りました。
朝刊小説「大観音の傾き」の作家・山野辺太郎さんトークショー 仙台で21日、単行本化記念(河北新報オンライン)
単行本『大観音の傾き』は、12月6日ごろ発売です。
出版社の『大観音の傾き』紹介ページ(中央公論新社)
【追記1】
イベントのご案内の画像ができました。ポスターにも、チラシにもなります。
貼り場所や置き場所に思い当たるところのあるかた、画像をダウンロード、印刷してご利用いただけましたら幸いです。A4ですが拡大・縮小も自由です。
『大観音の傾き』トークイベントのご案内(JPEGデータ)
【追記2】
本イベントがオンライン視聴に対応しました。下記のリンク先にアクセスしてください。
有料記事と表示されますが、河北新報オンラインへの無料会員登録で視聴できます。
ライブ配信に加えて、イベント終了後の視聴も可能です。
【動画】作家・山野辺太郎さんのトークショー映像、河北新報オンラインで21日配信 朝刊小説「大観音の傾き」単行本化記念(河北新報オンライン)
日本大学芸術学部(日芸)にて10月17日、「作家作品論Ⅰ」「エッセイ研究Ⅱ」のゲスト講師を務めてきました。
3限「作家作品論Ⅰ」では、佐藤述人先生との対談形式で、これまで執筆してきた小説のことをお話ししました。「いつか深い穴に落ちるまで」「孤島の飛来人」「恐竜時代が終わらない」「大観音の傾き」など、ほぼすべての発表作に言及したように思います。世の中から大きくずれた存在に心惹かれ、それが書くための想像の起点になる、といった話をしました。事前に谷村順一先生による「いつか深い穴に落ちるまで」の授業も実施されていたとのことで、学生の皆さんから寄せられた質問にもお答えしました。
授業のあいだの空き時間には、放送スタジオなど、学内の施設を見学させていただきました。
5限「エッセイ研究Ⅱ」では、石戸谷直紀先生の導きのもと、「釣り竿とおもり」(小説野性時代 ’20/4)、「北條君が過ごしたインド」(群像 ’19/2)を題材に、エッセイを書くことについてお話ししました。自分にとってエッセイとは、何かを主張するというより過去を見つめ直すための場なのだということを再認識した次第です。その場で「釣り竿とおもり」の全文を朗読するという一幕もありました。文章の書き方の例として、小説「こんとんの居場所」の冒頭も取り上げていただきました。ここで扱われた文章は、当ウェブサイトの作品倉庫に収載しています。
授業のあとには学生さんを交えた懇親会もありました。自身にも学びとなり、励ましを受けた一日でした。
【追記】
12月10日にも、日芸にてゲスト講師を務める機会がありました。5限「出版文化論Ⅱ」にて、新刊『大観音の傾き』を主な事例としながら、小説の執筆と出版にをめぐるお話をしました。小説の一節を朗読する場面もあり、大観音の仙台弁による独白箇所も含めて、新聞連載の第3回「苦しく感じる夜もある」に相当する範囲を読みました。授業のナビゲートをしてくださったのは、10月にもお世話になった石戸谷直紀先生です。このたびもまた、貴重な機会となりました。
『éclat[エクラ]』9月号(8月1日発売)に、『恐竜時代が終わらない』の書評が載りました。評者は斎藤美奈子さんです。
一部を引用にてご紹介します。
単なる寓話というなかれ。別々の文化を生きるふたり(2頭)は人間社会を先取りした存在ともいえるのだ。(中略)
山野辺太郎のデビュー作は、壮大な地理的スケールで読む人を呆然とさせる作品だった。そして今度は気が遠くなりそうな時間を一瞬で跳び越える。ありえない事実を見てきたように語る話術は一級品。ぜひ騙されていただきたい。
éclat[エクラ] 2024年9月号(Web éclat、集英社)
【追記】
下記のサイトで全文が公開されました。『恐竜時代が終わらない』に加えて、「あわせて読みたい!」として『いつか深い穴に落ちるまで』も取り上げていただいています。
文芸評論家・斎藤美奈子さんおすすめ!今読みたい話題の本3選 (Web éclat)
『東京新聞/中日新聞』8月5日付朝刊読書面に、『こんとんの居場所』の書評が掲載されました。評者は豊崎由美さんです。見出しは「自我&身体の拡張と消滅」。
一部を引用にてご紹介します。
穴を掘って日本とブラジルを直線で結ぶまでを描いた『いつか深い穴に落ちるまで』。二〇一八年、そんなトンデモ奇想小説で作家デビューしたのが山野辺太郎だ。
最新作品集『こんとんの居場所』の表題作もかなりユニークな小説といっていい。(中略)二人がそこで何を体験するかは読んでのお楽しみだけれど、読めばわかるのは、これが自我&身体の拡張と他者との同化についての物語だということだ。
一方、自我&身体の消滅と他者との同化について描かれているのが、併録の「白い霧」。(中略)
「こんとん」とは何なのか。作中で〈生命の進化の極限状態〉と示される「蒸発」のメカニズムはどうなっているのか。作者は科学的見解を一切示さず、力技でこの二つの不可思議な物語を立ち上げている。でもハードSFじゃないのだから、それでいい。重要なのは一見バカバカしい物語の底の底に横たわっている自我や生命という命題に向ける哲学的な問いだ。笑いながら考えさせられる。山野辺太郎は本当に不思議な小説家だ。
下記サイトで全文が公開されています。
〈書評〉『こんとんの居場所』山野辺太郎 著(東京新聞)
新刊『こんとんの居場所』が国書刊行会より発売となりました。
謎の生命体「こんとん」の取材記者として調査船に乗り込んだ男女。たどり着いた島=こんとんの上で、二人が見たものとは……。(「こんとんの居場所」)
防衛省のシステムに侵入した天才少年ハッカーが開いたのは、人類を“次の段階”に進める禁断の扉だった。人々が次々と人間の姿を失っていく中、ある親子が再会する。(「白い霧」)
それは滅びか、救済か――。
文藝賞受賞作『いつか深い穴に落ちるまで』(2018)、『孤島の飛来人』(2022)に続く、現代文学の異才による最新作品集!
(hanmoto.comの紹介文より)
赤坂真理さんとラランド・ニシダさんより、推薦の言葉を寄せていただきました。本の帯に記載された言葉を引用にてご紹介します。
退屈な日常から、非日常にグラデーションで少しずつ染まっていく感覚。読書の喜びの根源に触れた気がする。
ニシダ(ラランド)
するする運ばれていくうちに思いがけないところにいて、たとえそれが破滅かもしれなくても、笑えてしまう。ああ、言葉にだけ可能な、こんな旅があるのだ。
赤坂真理(作家)
装丁は森敬太さん、装画はnico itoさんがご担当され、魅惑的な表紙カバーとなりました。表紙と裏表紙で絵柄が微妙に異なっています。本を手に取り、帯をそっと外して、じっくりと眺めていただけましたらと思います。
表題作「こんとんの居場所」に「白い霧」を加えた中篇二作の作品集。どちらも広い意味での変身譚となっています。
お読みいただけましたら幸いです。
発売に合わせて、『こんとんの居場所』のPOPを作ってみました。
右側は本文に出てくる三行広告からの引用です。ここから主人公の旅路が始まります。
よろしければ、画像をダウンロードしてお使いください。印刷して枠線で折りたたむと、はがきサイズになります。
『こんとんの居場所』POP(JPEGデータ)
https://yamanobe-taro.jp/img/conton-pop-230418.jpg
出版社の『こんとんの居場所』紹介ページ(国書刊行会)
『こんとんの居場所』書誌データ(版元ドットコム)
『こんとんの居場所』を書店サイトで探す
amazon|e-hon|honto|honyaclub|kinokuniya|rakuten
『こんとんの居場所』関連記事一覧
『村田喜代子の本よみ講座』(中央公論新社、2023年3月刊)にて、『いつか深い穴に落ちるまで』が取り上げられました。
一部を引用にてご紹介します。
敗戦で落としそびれた部下と上司の命の生かしどころが、じつは底のない穴掘削事業に向かわせる。虚と実とを巧みに綯い交ぜた文章で、あり得ないホラ話に乗せられていきます。
本書ではほかに、クリスタ・ヴォルフ『チェルノブイリ原発事故』、内田百閒「坂の夢」、稲垣足穂「ファルマン」、ガルシア=マルケス「大きな翼を持った老人」などが取り上げられています。
『村田喜代子の本よみ講座』書誌データ(版元ドットコム)
『北國新聞』11月20日付朝刊の書評、『週刊エコノミスト』11月29日号〔21日発売〕の「読書日記」、朝日新聞デジタルマガジン『&w』〔11月21日更新〕の「ほんやのほん」にて、『孤島の飛来人』が取り上げられました。
一部を引用にてご紹介します。
本作でバブル崩壊後の混迷するサラリーマン世界を現出させるにあたって、筆者は風船おじさんの余映を漂わせることでこれに成功した。(中略)
北硫黄島や風船サラリーマンを描くことで、著者は令和の日本社会こそがシュールな巷であることを言外に語る。最後の一節まで堪能していただきたい作品である。
(『北國新聞』杉山欣也さん評)
前作『いつか深い穴に落ちるまで』で、真顔でとんでもない設定を走り抜ける作風に惹かれ、待望の2冊目。(中略)
先が全く読めないまま迎えたラストには、独特の寂しさと爽快感が入り交じる。前作同様、この終幕の「その後」も気になる作品だ。
(『週刊エコノミスト』美村里江さん評)
そして個人の過去にはかならず、誰かから聞いたことがまじっていく。青年の業務日誌ははからずも、この小さな国の歴史書となっていく。(中略)
新人作家がさらなる可能性を見せてくれた大きな作品。おすすめです!
(『&w』間室道子さん評)
各メディアのサイトは下記のとおりです。『北國新聞』『週刊エコノミスト』は会員記事、『&w』は全文公開となっています。
〈書評〉北硫黄島から現代写す 「孤島の飛来人」山野辺太郎・著(北國新聞)
読書日記 美村里江(週刊エコノミスト)
※「孤島の飛来人」は2冊目に紹介されています。
孤島に迷い込んだ青年が続ける業務 壮大な「会社員小説」(朝日新聞デジタルマガジン &w)
11月20日(日)に開催される文学フリマ東京35にて、『孤島の飛来人』『いつか深い穴に落ちるまで』サイン本を頒布します。
東京大学文学研究会のブース(A-17)で、現役部員の同人誌『駒場文学』のかたわらに、OBの本として置かせてもらえることになりました。
13時から1時間ほどブースに滞在する予定です。少部数しか持って行けないため、書店で購入済みの本をお持ちいただければ、その場でサインいたします。『孤島の飛来人』の書影入りTシャツを着ていると思いますので、見つけてください。なお、このTシャツは一点ものの非売品です。
文フリ東京の開催時間は12:00〜17:00、場所は東京流通センター(東京モノレール・流通センター駅前)です。
文学フリマ東京35
https://bunfree.net/event/tokyo35/
また、前日11月19日(土)には東大駒場祭に行き、こちらでは自著の頒布はないものの、同じく東京大学文学研究会のブースに13時から1時間ほど滞在予定です。駒場祭は3年ぶりにキャンパスで開催されますが、入場には事前予約が必要となっています。