『毎日新聞』2月11日付朝刊文化面の「気鋭に迫る」コーナーに、インタビュー記事が掲載されました。『大観音の傾き』のことを中心にお話ししています。記事の見出しは「言葉の力で世界を広げる」。ご執筆は同紙記者の関雄輔さんです。
一部を引用にてご紹介します。
日本各地に立つ巨大仏。その目に、我々人間の営みはどう映っているのだろう。
作家の山野辺太郎さん(49)は新著『大観音の傾き』(中央公論新社)で、仙台市郊外にそびえる「仙台大観音」を主人公の一人に据えた。仙台弁でつづられる大観音の心の声と、その足もとで繰り広げられる人々の物語。地上を見下ろす大観音のまなざしが、読者の想像力を解き放つ。
(中略)
「小説は言葉を紡ぐ営みですが、言葉にできないものは絶対に残る。でも、そういうものがあると暗示するところまでは、言葉でできるのではないでしょうか」
(中略)時に窮屈な会社員としての日々。そこで芽生えた「小説の中では遠くに行きたい」という思いが、「制約された日常」と「想像力を広げるためのホラ話」を交錯させる作風へと山野辺さんを導いた。
「言葉を通して、自分の目に見える世界を少しでも広げたい」と創作への思いを語る。「それが読者にとっても、自分のいる場所の見え方が変わったり、新たな視野が開けたりするきっかけになればうれしいですね」
気鋭に迫る 言葉の力で世界を広げる 作家 山野辺太郎さん(毎日新聞)
(ウェブ上では、サイトの会員向けコンテンツとして掲載されています)
『日経新聞』1月30日付夕刊文化面「目利きが選ぶ3冊」のコーナーに、『大観音の傾き』の書評が掲載されました。評者は陣野俊史さんです。
一部を引用にてご紹介します。
最初、ユーモア小説かと思っていた。つい笑ってしまう箇所が幾つもある。だが、この小説は震災後小説である。(中略)
大観音の言葉が、読む者の心に沁みる。
『大観音の傾き』山野辺太郎著 陣野俊史氏が選ぶ一冊 「助けられなかった」震災後(日本経済新聞)
(ウェブ上では、サイトの会員向けコンテンツとして掲載されています)
また、代官山T-SITEのウェブでの連載「文学コンシェルジュとっておきの一冊 間室道子の本棚」にて、『大観音の傾き』が取り上げられました。執筆者は、代官山蔦屋書店の間室道子さんです。
こちらも一部を引用にてご紹介します。
作者の山野辺太郎さんは職場の新人男性を書くのがうまい。よくあるはりきりボーイや「令和男子です、仕事に未来を求めてません」じゃないのがいい。滅私ではなくひたむきで、職務遂行に疑いを持たないが言われたことを鵜呑みにもしない。この距離感がすがすがしい。そして青年主人公たちは、まじめな顔でトンデモ仕事に向きあうのである!
(中略)
山野辺作品お得意の無茶やおとぼけもあり、呆れたり吹き出したりしながら、われわれは修司と観音様に気持ちを通わせる。御身に最大のピンチが訪れた時、救うのは誰か。乞うご期待!
下記のサイトにて全文が公開されています。
【第306回】間室道子の本棚 『大観音の傾き』山野辺太郎/中央公論新社(代官山T-SITE)
『週刊新潮』1月16日号(1月8日発売)の「Bookwormの読書万巻」コーナーに、『大観音の傾き』の書評が載りました。評者は豊﨑由美さんです。
一部を引用にてご紹介します。
転勤族の親のもと日本各地を転々としてきた修司は、この街の人たちが経験した悲劇の当事者ではない。そのことの後ろめたさと慎みを体現する修司が、大勢の住民や関係者から話を聴き、じょじょに大観音に気持ちを傾けるようになる本筋に挿入されるのが、なんと大観音の心の声なのである。
(中略)これは非当事者による出色の震災小説にして、終盤の感動を呼ぶ仙台大観音ミーツ牛久大仏というバディ小説でもあるのだ。
【追記】
下記のサイトで全文が公開されました。
大きいだけで役立たず……。悟りの境地に至れない「大観音に涙する」(Book Bang)
『毎日新聞』2024年12月28日付朝刊読書面の「話題の本」コーナーで、『大観音の傾き』が取り上げられました。ご執筆は武田砂鉄さんです。
一部を引用にてご紹介します。
傾いているはずがないだろう。じっくり見る。傾いているような気もしてくる。このまま倒れてしまうのか。爆破するのはどうかとの案まで出る。そもそも、あの震災を経て、今、大観音の気持ちはいかなるものなのか。
(中略)大観音に感じる悲哀はどこから来るのだろう。読み進めるうちに大観音と一体化し始める自分に気づく。簡素に説明し難い小説だが、体の深部に潜り込んでくる。
今週の本棚・話題の本『大観音の傾き』=武田砂鉄(毎日新聞)
(ウェブ上では、サイトの会員向けコンテンツとして掲載されています)
【追記】
下記のサイトで全文が公開されました。
『大観音の傾き』(中央公論新社) – 著者:山野辺 太郎 – 武田 砂鉄による書評(ALL REVIEWS)
『河北新報』12月22日付朝刊に、『大観音の傾き』刊行記念トークイベントの報告記事が載りました。見出しは〈「大観音の傾き」単行本化記念 山野辺太郎さん 執筆の思い語る 河北新報社で催し〉。一部を引用にてご紹介します。
河北新報朝刊「東北の文芸」面に4〜9月連載された小説「大観音の傾き」を手がけた仙台市出身の作家山野辺太郎さん(49)のトークイベントが21日、⻘葉区の河北新報社本館ホールであった。(中略)
山野辺さんは「なじみのある土地を舞台に書きたい思いはずっとあった。仙台の人はもちろん、遠方の人にもいずれは読んでもらい、仙台の中と外がつながる接点の役目を担えればうれしい」と語った。作品の一部を朗読で披露した。
下記のページに、報告記事とともにイベントのフルタイム動画がアップされています。閲覧には無料の会員登録が必要です。
【動画】河北新報連載小説「大観音の傾き」の作者・山野辺さん、仙台でトークイベント 書籍化記念 挿画担当の樋口さんをゲストに(河北新報オンライン)
また、河北新報オンラインのYouTubeにて、1分弱のダイジェスト動画をご覧いただけます。
【ダイジェスト】作家山野辺太郎さん、仙台で小説「大観音の傾き」出版記念トークショー(YouTube)
12月24日ごろ、角川文庫より『いつか深い穴に落ちるまで』が発売となります。
デビュー作が文庫になりました。初めての文庫です。
村田沙耶香さん、ラランド・ニシダさんに帯の言葉を寄せていただきました。
この小説は、突拍子もないのに生真面目で、奇妙なのに誠実で、愛おしいけれど残酷な、私にとって忘れ難い物語でした。
——村田沙耶香氏
作り込まれたリアリティーと荒唐無稽なファンタジーの狭間を行き来する異空間的小説。
——ニシダ氏(ラランド)
巻末の解説は、豊﨑由美さんがご執筆くださいました。タイトルは「想像力のブレーキペダルを踏まない男」です。
装丁は、『大観音の傾き』と同じく、鈴木成一さんです。深い穴の向こうに光が見える表紙カバーとなっています。
裏表紙には、次のような紹介文が載っています。
だって、近道じゃありませんか。戦後まもない日本で、ブラジルまで直通の穴を掘る前代未聞の新事業が発案された。極秘事業の「広報係」となった鈴木一夫は、計画の前史を調べ、現在まで続く工事の進捗を記録していく。地球の裏の広報係との交流や、事業存続の危機を経て、ついに「穴」が開通したとの報告を受けるが……。奇想天外な発想力で多くの本読みたちを唸らせた、唯一無二のサラリーマン小説。第55回文藝賞受賞作。
初出は『文藝』2018年冬号。河出書房新社から単行本が出たのは、2018年11月のことでした。文庫化に際して、加筆修正をしています。
文庫の記号は、角川文庫[や 75-1]です。よろしくお願いします。
出版社の『いつか深い穴に落ちるまで』紹介ページ(KADOKAWA)
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