共同通信・文芸時評の「恐竜時代が終わらない」評
共同通信の文芸時評「デザインする文学」で、「恐竜時代が終わらない」が取り上げられました。評者は、倉本さおりさんです。
一部を引用にてご紹介します。
山野辺太郎の「恐竜時代が終わらない」(「文学界」7月号)は不思議な読み心地の小説だ。スーパーで働く50歳のしがない男が、なぜか学会にひっぱりだされて講演するところから幕があく。
実はこの男、恐竜時代の記憶を父親から口伝えで引き継いでいるという。太古から続く伝言ゲームの果てにひもとかれるのは、捕食—被食関係にあるはずの恐竜同士が織りなすロマンチックで哀切な物語だ。そこには、子を持たずに人生を終える予感を抱いている男自身の姿をはじめ、社会の論理からはじき出された現実の人間たちの悲哀もまた織り込まれている。
「わたしにとって過去とは、絶えず修繕を重ねながら、幾度となく生き直すための場でもありました」。男の語る物語が寓話にとどまらない奥行きを備えるのは、ロールモデルを失った今の時代をひっそり照らしてくれるからだろう。
「南日本新聞」(6月25日)、「京都新聞」(6月29日)、「山陰中央新報」(同)などに掲載されました。おそらく、ほかにもあるかと思います。——追記:「沖縄タイムス」(7月13日)
紙面には、伊藤健介さんのイラストも掲載されています。
デザインする文学・6月 普通の陰に隠れる恐ろしさ(共同通信・文芸時評)
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